妄想。

僕はよく妄想する。妄想の中で僕は大概怒っているか、恥ずかしい思いをしている。周りに人がいなければ妄想に反応して声を上げることもある。独り言といえなくもないけど、ちょっと違うような気もする。
例えば、きょうは少なくとも2つの妄想を見た。見たというべきか、想像した、あるいは創造したというべきか、よくわからない。「少なくとも」と言ったのは今思い出したのは2つだけど、もっとあったような気がするからだ。
ひとつ目。仕事帰りの特急電車に乗っていた。割と空いていたので二人がけの座席に一人ずつ座っても空席ができていた。僕の前の席に若いお兄ちゃんが座って、背もたれを深く倒した。目の前の空間が窮屈に感じる。他にも空席はあるのにわざわざ俺の前に座って背もたれを倒さなくったっていいだろう、と僕は思った。そこで、僕は一つ後ろの席に移った。やれやれ…。ところが、兄ちゃんはさっき僕が座っていた席、つまり今の僕の席の目の前の席に移った。そして、さっき自分(兄ちゃん)が座っていた座席を後ろ向きに回して4人がけのボックス席にした。足を前の席に投げ出し、背もたれを思いっきり倒しやがった。むろん、それは俺の目の前の席が俺に向かって倒れてくるということである。
一度ならずも二度までも。キレそうになった。他人が迷惑することに平気な神経が許せなかった。後ろから髪の毛つかんでやろうかと、かなり本気に思った。ほかにも空席はあったけど、自分が移る気はもうなかった。
…ここまでは妄想じゃなくて、事実。ここからが妄想。髪の毛をつかんで俺は文句を言った。「テメエ、ひとの迷惑かんがえろ」と俺は言った。「なにすんだよ!俺がどこ座ろうと俺の勝手だろ。ざけんじゃねえよ」と兄ちゃんは反抗する。「なんだと。言ったな。よ〜し、分かった。」と言って、俺は兄ちゃんの真向かいの席に座った。「なにしてんだよ。じゃまだよ。あっちいけよ、バカ」と兄ちゃんが言う。「どこ座ろうと勝手なんだろ?それともなにか、この席はお前のものか?」と俺はうれしそうに言葉を返した。
…というところまで妄想して、イヤになった。なにを好き好んでそんなお兄ちゃんの対面に座らなきゃならんのだ。俺はバカかと思ってしまった。
…2つ目の妄想はそのうち。