『ミリオンダラー・ベイビー』

ミリオンダラー・ベイビー [DVD]
☆☆☆☆☆
五つではない。ゼロである。
途中まで(病院のシーンの前まで)なら四つだった。後半の出来によっては五つになるかもしれないと思っていた。
ヒラリー・スワンクはちゃんとボクシングのトレーニングをしたのだろう。試合のシーンは迫力があってサマになっていた。連戦連勝で世界タイトルマッチまで登り詰める勢いが現実感をもって画面の中ではじけていた。
そのままハッピーエンドで終わるわけがないのは分かっている。なんらかの悲しみなり哀愁なりその中でささやかな希望なりが提示されて終幕に向かうのだろうと思っていた(そういうのってお決まりではあるけれど)。
でも、あんなツライ話にしなくったっていいじゃないか! 悲しみや切なさは、それをうまく昇華させることによって感動を与えることができる。でも、悲惨さというものは昇華させることはできない。悲惨なエピソードは確かに観客の心を揺さぶることができるけれど、揺さぶられることと感動はイコールではない。
映画や演劇に悲劇はあっても苦劇はないのである。