やさしさ

人から「やさしい」と言われたことがある。でも、その度に「違うんだけどなあ」と思っていた。ま、相手も挨拶代わりに言ってることだからムキになって反論することもない。テキトーに受け流したりギャグで返したりする。
人(相手)を傷つけたり困らせたり不快に思わせたりしていないかを気にして、そうならないように行動することがあたかも「やさしい」と受け取られているだけなのだろう。それは、傷ついていたり困っていたり不快に思っていたりする人を気遣うことじゃなくて、自分が人を傷つけたりすることで自分が苦しむことを怖れているだけじゃないのか。本当のやさしさとは、自分の苦しみとは関係なく、相手のことだけを思ってその人を助けたり楽しませたり慰めたりすることなのじゃないだろうか。
世の中みんなやさしい人ばかりだけど、結局自分かわいさの偽物のやさしさが蔓延している。「それは違う」と誰かに言ってほしいけど、本当のやさしさと偽物のやさしさを見破ることはとても難しいように思う。自分の「やさしさ」がどっちか判らない人も多い。
そういう人たち、あるいは僕も、人を好きになると偽物の「やさしさ」じゃなくて、本当の「やさしさ」を持つ瞬間があると思う。その「やさしさ」は特定の人に対してのものでしかないけど、それが「愛」なんだろう。全ての人に対して愛を持つ人は神である。僕を含めた多くの人は神にはなれない。