ヤンヤン 夏の想い出 [DVD]

ヤンヤン 夏の想い出 [DVD]

邦題は全然イケてませんが、原題は映画を観ないと理解できません。
原題は『a one & a two』です。
あ、ワン。あ、ツー。あ、ワン・ツー・スリー・フォッ。ズンチャーカ、ズンチャチャッ♪みたいな、ン十年前のバンドが曲に入るときの掛け声をイメージしてたのですが、それは全くの誤解でした。
僕の勝手な解釈では、『a one & a two』は「一人になったり、二人になったり」です。本当は全然違う意味かもしれないけど、そう思うのです。文法的には「ある一人とある二人」とか「一人でいることと二人でいること」と訳したほうがいいのかもしれません。でも、この映画では恋愛を状態として表すのでなく変化の中で表しているように思います。だから、語呂は悪いけど「なったり」という言い方をしたくなります。
映画にはある家族が登場します。8歳の小学生ヤンヤンと両親、高校1年の姉、それにおばあちゃんです。あと、母の弟夫婦や父の元カノや姉の友人とその彼氏なんかが出てきます。そして、いくつもの恋愛が、ほとんど辛かったり切なかったりの恋愛が、この映画で描かれます。でも、いわゆる「恋愛映画」というカテゴリーには入らないようです。恋愛の甘美さに酔うような映画じゃないからです。
なにか得体のしれない雰囲気をもつヤンヤンは、どうやら微かすぎて恋心とも言えないような感情をある少女に抱いているのですが、この誰もが経験してきた恋愛の萌芽は、大人になるにつれやっかいな感情と事件を引き起こすことになるのでしょう。ヤンヤンの未来が僕らの歩いてきた道と同じ方向に向かうのかどうかは分らないけど、ヤンヤンの父親や姉は「a one」になったり「a two」になったりし、観客は、映画のシーンの中に過去の自分の感情やいつかあった光景を見つけることになるのです。それを懐かしく思える人にはこの映画は楽しく、それを辛く思える人はこの映画を観ぬほうがよい。

[追記]
この映画にはイッセー尾形が出演している。大田という名の天才プログラマーという役どころである。この大田とNJ(ヤンヤンの父親)は誠実さで結ばれている。
近頃、誠実さについて考えることが多い。